テンセグリティー

テンセグリティーとは、”神の地理”であり、バックミンスター・フラーによって発展させられたものである。ATSI,そして他のボディワークのアプローチにおいて、身体をテンセグリティーとしての観点からとらえることにより、いかに身体が働き、代償するのかを理解するための、よりホリスティックな方策への道を開き、理解不可能とも思えるような動きをも理解するためのツールともなり得る。

”テンセグリティー”という言葉は”テンション=張力”という言葉と”インテグリティー=統合”という言葉から作られた造語であり、構造の統合の等級は、その構造内の張力のバランスによって決定づけられる、ということを意味する。

宇宙に存在する全ての構造は、張力と圧縮、”押す力”と”引く力”のバランスによって支えられている。椅子が床の上に置いてある、ランプが天井から吊り下げられている、これらすべては、そこにある何かを支える方法なのである。剪断力、屈曲力をはじめ、全てのフォース=力は、基本的な張力と圧縮の組み合わせなのである。

私達は主に圧縮をサポートの主軸とした建築物を見慣れている。ブロックが積み重ねられて作られているレンガの壁は、その典型的な例である。これは連続する圧縮による構造であり、重力による圧縮が、1つのブロックから次のブロックへと地面に至るまで連続的に伝えられる。一番下になるブロックはその上にある全てのブロックからの圧縮を支えるために、かなりの強さを必要とされる。

誰も、レンガの壁や、またこれに似た構造の家の重さを気にすることはないであろう。連続的な圧縮による構造において、その重さが考慮されることはほとんどない。しかし、人間の身体は、進化による厳格な重さの規制のうえに構築されており、この連続的圧縮は、身体の構築のモデルとしてよいものとは言えない。

しかしながら、私達は現代の解剖学やキネシオロジーの分野において、まるで人体が圧縮のモデルであるかのように取り扱ってきた。

実際には、人間の身体は風船のようなものなのだ。風船は典型的なテンセグリティーの構造のひとつである。風船のゴムの皮部分は”張力の要素”であり、引き込むということをする。風船のゴムの皮部分は中から外へと押し出そうとする空気とのバランスがとれるところまで引っ張り込もうとし、そのバランスにより風船のサイズが決定づけられる。この風船のモデルの空気の代わりに、連続した棒を用意し、風船のゴムの皮部分にあたるところに、ゴムひもを用意することにより、典型的なテンセグリティーの構造を得ることができる。

棒の代わりに骨を使い、風船のゴムの皮、そしてゴムバンドの代わりに、筋膜、筋筋膜を使うことにより、ここに”筋筋膜のテンセグリティー”を得ることができる。