アナトミートレインの簡略な歴史
アナトミートレインの著者であるトム・マイヤーズによる簡略な歴史とは:
アナトミートレインは、1990年代にロルフインスティテュートで筋膜の解剖学を指導していた時に、生徒が遊んで学べるゲームとして開発したものなんだ。 入手可能な解剖学の本は、全て”単一の筋肉”理論を前面に押し出しているけれど、アイダ・ロルフは常に”全ては、筋膜を介してつながっている”と主張しつづけていた。
グレープフルーツやヘチマのイメージを連想させる以外に、どうやってこれを現実として伝えられるのか?
生徒の知識を確実にするための単なるエクササイズのひとつとして、筋膜を介して筋肉群をひと続きにすることを始めてみた。このアイデアは、Dr. ジム・オッシュマンから、文化人類学者であり、アレクサンダーテクニックの生徒でもあったレイモンド・ダートの記事(胴体の筋肉群を二重螺旋のアレンジでリンクしたもの:アナトミートレインのスパイラルラインの一部としても表現される)をもらったことから始まった。
私は、これをベースとして、生徒が筋肉のひとつながりをソーセージのリンクのように(どこにつながっていても、あるいはどんなポジションになることがあっても、比較的ストレートなラインになるようなリンク)理解することができるように、ダートの考えを全身に拡大することにした。
この考え方をもとに、何度か指導をするうちに,このプロジェクト全体がより興味深いものとなり、友人であるアニー・ワイマンの助けを得て、このコネクションを体系づけることを始めたんだ。これによってラインの絵柄がより明確なものとなり始めた。
そうするうちに、自分自身がクライアントのアセスメントをする時にも、このラインが見えてくるようになり、セッション自体もこのラインに沿って組み立てていくようになった。
本の出版に向けての動きは,とてもハッピーな偶然として起こったんだ。メイン州で指導した、初期の、とても小規模のマッサージセラピストのためのクラスの生徒の一人が、このラインをとても気に入って”このラインをハワイでリー・ジョセフ(ストラクチュアルインテグレーション関連のボディワークの学校に関与)の生徒達に教えるわ!”と発言。そこで、この考えを自分の考えとして主張し,正しい情報として世の中に伝えていくためには、書き残すことが必要なのだということを認識することになった。
時を同じくして、レオン・チャイトウ、N.D.、D.O.(神経病理学医、整骨医)がボディワークとムーブメントセラピーの為のジャーナルを創刊することになり、彼の昔からの友人達皆に、このベンチャーのスタートになる記事の執筆を依頼していた。そこで、ラインに関する考えを記事として書くことになった。
これらのオリジナルのジャーナル記事が評判を呼び、出版社チャーチルリビングストーン(のちにハーコートに吸収され、又のちにエルスヴィアーに吸収される)から、この考えに関する本の執筆依頼を受けることになった。この本は2001年に出版され、そして今では英語の他、 7カ国語の言語(ドイツ語、ポルトガル語、イタリア語、韓国語、日本語、ロシア語、中国語)に翻訳をされている。
オリジナルの出版後、昔の文献の中に、私の考えに相似した考え方が見つかることに気づくことになる。鍼灸の経絡はもちろんのこと、レオナルド・ダヴィンチのスケッチの中に、1930年代に活躍したドイツ人解剖学者ホープキ、そしてフランスのフランソワ・メジエールの業績に。
現在では、アナトミートレインのアイデアをサポートする、概論のオーバービューや、全てのラインと領域をカバーする複数のテクニックビデオ、解剖のエビデンスやビジュアルアセスメントなど15以上のDVDプログラムが存在する。2016年の時点で、アナトミートレインの書籍は100,000以上購入され、何千人ものプラクティショナー達が、アナトミートレインのクラスやウェビナーでの経験に賞賛をおくってくれている。アナトミートレインは、専門家達の個々のニーズに応えるより詳細なカリキュラムを構築し続けている。
アナトミートレインとストラクチュラルインテグレーション
アナトミートレインのマップを開発し、その後、まるでダマスカスへの道のりにあったサウルのように、衝撃的に突然心に浮かんだこと。それは、アナトミートレインズの概要は、アイダ・ロルフのストラクチュアルインテグレーションの10セッションのレシピを考察するための論理的なレンズとして使うことができるということだった。別の表現をすれば、これらのラインを漸進的に自由にしていくことを介して、レシピを僅かに構成し直すことも可能である、ということに気づいた。
そうして、アナトミートレイン ストラクチュラルインテグレーション(ATSI)が誕生した。
ATSIは、アナトミートレインのマップを使用して、私達の提供する12セッションシリーズのストラクチュラルインテグレーションのプログレッションを、専門家や一般にも理解することができるロジカルな解説を提供する。ATSIの認定プログラムは、数多くの人々の共感を得て、アメリカのみでなく世界各国において、500名近くのプラクティショナーを送り出している。
結論
ATSIは、アナトミートレインの概要のある特定の適用にしか過ぎない。私達は、アナトミートレインが、ヨガや、パーソナルトレーニングや、理学療法、リハビリテーション、体育、パフォーマンス向上など、ありとあらゆる様式に取り入れられていくことを望んでいる。
私達は、アナトミートレインが前向きに受け入れられたこと、そして様々な文化圏における数多くの専門家達が応用してくれたことに触発され、謙虚な気持ちになるとともに、心から感謝をしている。